ロマンス小説感想日記

ロマンス小説感想日記

海外ロマンス小説、翻訳ミステリーのブックレビュー

青銅の騎士 ポリーナ・シモンズ

 先日読んだK・ハナの「ナイチンゲール」が大戦中のフランスの話だったので、そういえば積読本の中に戦時下のロシアが舞台のロマンスがあったっけ・・と引っぱり出してみた。これはうちにある積読本の中でも相当年季が入ってて、このままだと10年ものになりそうなのでこの機会に読むことに。原書1冊ぶんを4巻に分けてるすごい長編なのと、3部作で続き物なのに1作目しか翻訳されていないことがネックでこれまで読まずにいたけど、名作と言われているだけあってとても感動的なロマンスだった。

 ロマンス小説らしからぬ重厚なストーリーで、第二次大戦中のソ連の状況を克明に描き出していて戦争の悲惨さが胸に迫ってくる。爆撃で死ぬのも悲劇だけど、食料不足による飢えでじわじわと体が弱って死ぬというのは痛ましすぎるわ。戦時下の過酷な生活をリアルに描写していてかなりヘビーな内容だけど、だからこそロマンスにも重みがあり大きな感動を得られるんだと思う。実際「ナイチンゲール」よりもこちらのほうが戦争の描写は凄惨だと思った。

 とにかくヒーローのアレクサンドルが素晴らしい。彼の生い立ちは本当に不憫で、アメリカ人だったのに共産主義を信奉する両親のせいでソ連に亡命し過酷な人生を強いられ、それでもいつかアメリカに帰る希望を捨てずに必死で生きている彼は正にヒーローと呼ぶのにふさわしいキャラクターだと思う。赤軍の将校である彼が17歳のヒロインと出会って運命的な恋に落ち、お互いに命を賭けてでも相手を守ろうとする強い愛が感動的で涙なくしては読めない。ヒロインのタチアナは、最初はまだあどけない少女という印象で子供っぽいところがあったけれど、戦争のために大人にならざるを得ず、アレクサンドルを一途に愛して知恵と勇気で彼を助ける強い女性に成長する。大怪我をして医者にも見捨てられたヒーローを、諦めずに必死で看護する彼女の姿に涙しない人はいないと思うわ。

 1~2巻はロマンスよりも戦争の悲惨さが印象に残る内容だけど、3巻目には遂に再会した二人が愛を確かめ合うロマンス小説らしい展開で、甘いロマンスを堪能できる。4巻目にはまた波乱が待ち受けていて、これからどうなるんだろうというところで終わっていた。原書は2001年刊行で、扶桑社が2010年に翻訳を出したのだけれど、当時は「アウトランダー」のシリーズが売れていた頃だからこれも出せたんだろうね。これだけの長編を出すのは出版社にとってもチャレンジだったと思う。もう少し短ければ3部作を全部出せたかもしれないわね。(実際、読んでいてもうちょっと短くまとめられたんじゃないかと思う部分もあって、ヒーローがヒロインの姉と先に出会っていて三角関係っぽいところは重厚なストーリーの中でややチープに感じられたので省略してもいいと思ったし、3巻目にラブシーンが集中していて少々くどい感じがした。)

 続きが読めないのが残念だけど、逆に考えて1作目だけでも読めて良かったと思うことにしよう。最近はこういう波乱万丈系の壮大なロマンスってほとんど翻訳されなくなってしまったよねぇ。映像化するのに良さそうな内容だと思うので、アウトランダーみたいにドラマ化されるといいのになあ。

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