ドイツの新人作家のミステリー。ドラマ化されて最近Netflixで配信が始まったばかりで、私は見ていないけどドラマの評判も良いみたい。
読み始めてすぐに、エマ・ドナヒューの「ルーム」みたいだなと思った。「ルーム」に捻りを加えてミステリー色を強めたようなストーリー。女性が拉致、監禁されるサスペンスは多いので、特色を出さないと読者にアピールできないと思うけど、これはなかなか頑張っていると思う。先の読めないストーリーで、どういう結末になるのが最後までわからなかった。登場人物の誰も信用できず、子供のハンナさえもどこか不審なところがあり、後味の悪いイヤミス系かなと思って読んでいたけど、そうではなく割と綺麗に締めくくられていたのが意外だった。最後の最後であまりにも多くの事実が明らかになって少し困惑したし、犯人の正体も、大した伏線も無くいきなり判明したので、唐突すぎる気がしたけど、デビュー作だから頑張ってどんでん返しを盛りまくったんだろうね。最後まで謎を引っ張って緊迫感を持続させたのは上手いと思った。ヤスミンの行動にやや不自然さを感じるところはあったけど、全体的には面白かった。
そういえば以前読んだ、シェヴィー・スティーヴンスの「扉は今も閉ざされて」(→感想)もこれと似た話だったけど面白かったな。被害者の女性が精神分析医に語る形で真実が明かされていくストーリーが独特だった。本作が気に入った方は読み比べてみるのもいいかも。