アリス・フィーニーは好きで既刊は2冊とも読んでいるので、新作のゲラ版先読みキャンペーンに応募してみたところ運良く当選。早速読んで出版社に感想を送ったけど、ブログやtwitterへの書き込みは大歓迎とのことなので、こちらにも感想を。
結婚生活が暗礁に乗り上げ、関係を修復するためスコットランドのチャペルへ週末旅行に出かける夫婦が主人公のミステリー。夫のアダムには相貌失認という脳の障害があり人の顔が認識できないという。興味深い特性を持つまさに"信頼できない語り手"にピッタリの主人公で、否が応でも期待が高まるというもの。
人里離れた場所に建つ古いチャペルが不気味な雰囲気を盛り上げ、どんな恐ろしいことが起こるのだろうと想像を膨らませずにいられない。腹に一物あるような登場人物ばかりで誰も信用できず、読み進むにつれてどんどん深まっていく謎に、頭をフル回転させながら読んでいた。捻りのきいたプロットが持ち味の作家なので、どんな仕掛けがあるのだろうと身構えていたにもかかわらず、終盤はまさかの展開に驚愕。
この手のドメスティック・スリラーが好きで色々読んだが、アリス・フィーニーはいつも読者の意表を突く捻りの効いたプロットで楽しませてくれる、このジャンルではピカイチの作家だと思う。この新作も期待を裏切らない出来で、文句なしに面白かった。
以上が出版社に送った感想で以下は補足
作中、結婚記念日の度に妻が夫に書いていた手紙が度々出てくるんだけど、愛し合って結婚したはずなのに時が経つにつれだんだん愛がすり減って、結婚生活が壊れていく過程がすごくリアルに記されていて身につまされた。(読んだら旦那さんor奥さんにプレゼントを贈りたくなるかも?!) 不妊治療が失敗して子供を持つことを諦めるエピソードにはほろ苦いものがあり、女性なら共感できるんじゃないかな。ある意味、ものすごく屈折したカップルの愛の軌跡と言えるかも。最後まで読んで、破れ鍋に綴じ蓋だな!と思ったし。そういうわけで、夫婦円満な方にも、そうでない方にも、おススメのミステリーです!(笑)
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